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16)経済社会が奪う生きがいの仕事 未来社会に生かせる生涯教育 |
生涯教育と社会参加
●用意されている生涯教育 日本人の平均寿命が延びている状況に呼応して、各自治体・大学を初めとして、あらゆる場所に生涯教育の場が増えてきています。
インターネットで「生涯教育」という言葉を検索しますと、とても見きれないほど多くの情報が出てきます。大正琴からダンス、パンケーキの作り方、武道、星を見る会まで、実にさまざまです。特に難しい注文をつけなければ、思いつくものは大抵用意されています。世界の各地で止むことのない民族紛争や戦争の中で生きるために必死な国々の人から見れば、生涯教育の場は、まさに至れり尽くせりです。
一方、私たち日本人は経済成長の恩恵もあって、以前のように死ぬまで働かなければならない状況にいる人は数少なくなっています。あえて苦労してまで働かなくても良い状況になったことは進歩といえるのですが、多くの場合、仕事は人にとって生きがいなのです。
確かに辛い仕事も多く、楽しい仕事ばかりではありません。しかし人は仕事を通じて社会参加をしています。
働くということは、餌を手に入れる行為です。非常に大切な行為です。田畑を耕すのも、野山を駆け回って獲物を手に入れるのも、海へ漁に出かけるのも、現代人が会社に出かけ働くのとまったく同じ行為です。うまくいくと充実感さえ得られます。
人は同じ環境で働くと共通の理解を持ちますし、仕事を通じて人とのやりとりの中から心の交流さえも生まれます。つまり仕事をすることによって、社会参加しているのです。
仕事に就かず、ブラブラしている怠け者でも、やることがないというのは淋しい限りですし、することがなく無視されるのは人にとって淋しいものです。しっかりとした人生の計画でも持っていない限り、定年を迎える心境に淋しさが伴うのも、そのせいでしょう。
平均寿命も伸び続け、さらに進歩を続ける高度技術社会は、今後、ますます人の労働を必要としなくなっていくことでしょう。現実として社会参加を求める人の受け入れ先は、先細りなのです。
ありあまる余暇をいかに過ごしたらいいのかと思う人が増えているのも、現実です。このような社会状況の中で、生涯教育のシステムは重要な意味を持っています。
●自己満足と社会参加 生涯教育のシステムにより、自分が興味を持ったものを簡単に学べる機会が増えたのは事実です。
興味があっても働くばかりで、なかなかそれを学べなかった人たちにとって、生涯教育システムは生きる喜びを提供することとなりますし、それによって人々の心が少しでも癒されるならば、その存在価値は大きいものです。
一方、生涯教育に参加する人の中には、自己の果たすべき役割を持ちたい人や自分の知識や技術を社会で役立てたいと思う人が多くいるのも事実です。期待されていると、生きがいを感じるタイプの積極派です。
生涯教育システムを人々の教養や技術や知識の向上や生きがいのためとするならば、解決しなければならない問題も多くあります。
ご存じの通り、私たちも含め多くの国々の人々も、豊かな社会の実現のために日夜努力を重ねています。
しかし、結果として高度技術社会になればなるほど、人間の労働力は不要になり、若年層でさえ就職先が見つからない状況を招いています。発展し続ける経済社会は、人々から生きがいにすべき仕事を奪う状況を作り出しているのです。
生涯教育で得た知識や技術を役だたせることで、生きがいを感じる人も多いはずです。得たものを生かす場も必要なのです。ただ暇つぶしのために生涯教育システムがあるのだとしたら、未来社会にとっての貢献度は、低いものになってしまうでしょう。
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