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20）本来国や公的機関がやるべき活動 自己責任論は被害者を傷つける犯罪 |
イラク支援活動と自己責任
●個人の在り方、国の在り方
アメリカ軍の侵攻によって混乱状態にあるイラクで民間ボランティアを含む日本人の方々が、民兵組織に身柄を拘束され人質状態になった事件は記憶に新しいとことと思います。
その際、愛する家族を人質にとられ、安否の情報もままならない中、日本に残された家族の方々は日本政府や報道機関、現地メディアなど各方面に人質となった肉親の解放を必死に訴えかけました。その行動は日本に残された家族同士の固い結束と、深い愛情によってもたらされたものでした。
一方、肉親の安否に心を痛め必死に行動していた家族の方々に対して、大量の非難メールや脅しとも言えるイヤガラセ電話などが数多くありました。
その多くは「自分で勝手に混乱状態の地域に行った奴が悪い、税金の無駄、自己責任だ」というものでした。
はたして、そのようなことが言えるでしょうか？自分自身がその立場におかれたら、いったいどのように感じるのでしょうか？ここに現代社会が抱える大きな問題が、見え隠れしています。
人の心が荒廃しているばかりではなく、思慮が浅く、思いやりのない人が多いことを改めて知らされました。
人として優しさの微塵も感じられません。非難をした側の言い分である自己責任とは、どのようなものでしょうか？
自己責任とは行動の結果を本人の覚悟あるなしにかかわらず、直接本人が受け止めるもので、その結果を自分以外の人に転嫁できない部分と言えるでしょう。
分かりやすく言えば、車で速度を出しすぎて、ものに衝突して怪我を負う、誰にも文句は言えません。それが当事者の自己責任です。
しかし、事故を起こし怪我を負ったその本人を、国やその他の人たちが自己責任だからといって放置して良いものでしょうか？社会の仕組みはそうはなっていません。少なくても法の整備された国においては、そのようなことはありません。
●人命尊重と自己責任
その思想の根底には、人命尊重という大原則が存在するからです。
毎年発生する冬山遭難や海水浴や行楽での事故と、その救助活動。最悪の場合、救助に向う隊員の命が危険にさらされることもあるのです。それでも人命尊重の立場から、救助活動を放棄することはありません。一方、救助される人の大半は慎重さを欠いた行動で遊びに出かけて危険な状況に陥った人たちです。
それに比べ、人質の中に紛争地域であるにもかかわらず、自らの命をかけてまでボランティア活動をしていた人もいます。本来ならば国やその他の公的機関が率先してやるべきことを、民間でありながら、イラクの人たちのためにボランティア活動をしていたのです。
物見遊山で危険な状況に陥ったのとは違うのです。
確かに紛争地域へ出向いて危険な状況に陥ったまでは自己責任かもしれません。しかし、紛争地域の子供達のために活動をしたり、現地の状況を広く世界に発信したりする行動を人道的立場から否定することはできません。
そもそも国際動向などを判断する外務省をはじめ国がもっと危機意識を持って自国民を危険から守ると言う立場をハッキリ示していれば、事前に渡航禁止、出国禁止などの方法はとれたハズ。この期におよんでもいまだイラクは戦闘地域ではないと総理大臣が言い張っているような状態では、国民に危機感は伝わりません。
それに加え、人命が危険にさらされているときに、自己責任を楯に傷ついている被害者の家族を責めるような人の言動を理解できないのは私だけでしょうか？拘束された時点で、自己責任の代償は支払われているのに。
問われているのは私たちに何ができるかです。人同士が愛し励まし合い、国が国民を守り尊重するということが、本来の姿のハズです。
「自己責任」という言葉に隠れて、被害者を傷つける行為は第二の犯罪です。
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