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33)地下資源などの紛争が生む戦争 平和の実現は富の公平な分配から
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貧富の拡大と世界平和
●富の分配と戦争 人々の争いや戦争の多くは当事者間の経済的な利害関係、つまり富が原因です。一口に富と言ってもその内容は多岐にわたり、豊かな生活を育む領土から貴金属をはじめとする鉱物資源や漁業権などの資源の帰属に関する権利も含みます。
悲惨な殺し合いをする民族紛争や内戦がやまないのは当事者同士の利害関係もあるのですが、その地域から価値ある資源が得られる状況下では、陰で争いを煽る経済大国や大企業が必ずといってよいほど見え隠れします。
ますます需要が高まるパソコン、携帯電話、テレビゲーム、デジタルカメラ、カーナビ、デジタルビデオ、DVDなどの電子機器の製造上、欠かせない希少金属であるタンタルと呼ばれる物質があります。事実大変高価です。
その希少金属タンタルの主な産出国であるアフリカのコンゴ民主共和国はアフリカ最大の鉱物資源輸出国で、ダイアモンド、銅、コバルト、金、石油、亜鉛なども採掘され膨大な富が生み出されています。でも国民一人あたりの所得は年間わずか一万円強。変です。富の分配が公平に行われれば国民はもっと豊かなハズ。貴重資源の宝庫ゆえか、1960年代から幾たびの動乱が勃発し、今も十年以上内戦状態が続いて、というか続けさせられ、死者も五百万人を超えるといわれる状況の中、国家としての体制が整いません。
混乱が続く地域では、一部の権力者と結託すれば、その地域から得られる貴重な資源も有利に入手できます。事実、国連は2002年10月、世界のダイヤモンド市場のほとんどを握るデビアスや、南アフリカの鉱山会社アングロアメリカン(デビアスの親会社)、イギリスのバークレイズ銀行など欧米と南アフリカの85社にも及ぶ企業が、コンゴ民主共和国の資源略奪に関係し、内戦を煽っていると批判する報告書を発表しています。富の奪い合いで人々が戦争を強いられる典型的な例です。
●地下の富は内戦を生む コンゴ内戦が続く理由もそうですが、同じように地下資源があるために、世界のあちらこちらで内戦が起きています。インドネシアのアチェ州は石油資源が豊富な地域。よって地元勢力が分離独立を求めて内戦が勃発しました。インドネシア政府はアチェの勢力に、地元の油田から得られる石油収入の70%を与える条件を出しましたが、交渉は決裂、その後内戦が再発しています。
イラクにも豊富な石油資源があります。紛争がやまない地域です。大国が撤退しないのは、その豊かな資源の権利が目当てで、何も得られない国には派兵もしません。
歴史を見ても、精神的なことよりも富の奪い合いが原因で起きた戦争がほとんどです。名誉のための戦争が滅多にないのも当然でしょう。
際限なき欲望という、他の生き物にない性質を負わされた人間は地球という閉鎖空間の中で、限られた富を奪いあって、自己の立場を優位に保つ生存競争を続けています。
戦争絶対反対とか世界に平和を!とか、プラカードを掲げながら行進する市民の姿や平和を訴え啓蒙活動をしている人々の様子を目にすることもありますが、相互の経済、つまり富の分配のあり方を考えずに問題解決できないことを知るべきです。戦争や紛争の原因の多くが、富の分配にあるのです。
今や地球上には約63億人以上の人々があふれています。その中で運良く経済力を行使できる人々は約12億人。数字でいえば、地球上で得られる農水産物や工業生産物やその他すべての富の90%を先進国の12億人が奪い去り、残された10%の富を50億人以上の人々が奪い合っているのが事実。この事実に気がつき始めた人々が多くなった今、直接的原因でないにせよ、テロが起きないほうが不思議です。よほどお互いのバランスと相手の立場を考えて行動しないと、うまく平和を保てるはずもありません。
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